糧とくのITに対する取り組み

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北海道から、業務改善の知見を共有していきたい

私たちは北海道で事業を営む一社として、自社グループの米穀販売の現場業務を支える業務管理システムを「内製」で開発・運用しています。この3か月で、その開発は大きく加速しました。本記事では、何をつくり、どれだけ業務が軽くなったのか、そしてどんな進め方をしているのかを、できるだけ具体的な数字とともに共有します。

同じ北海道で、人手不足や属人化に悩む事業者は少なくありません。「うちの規模では大きなシステム投資は難しい」——そう感じる経営者の方にこそ、現実的な選択肢として届けばと考えています。

3か月で何をつくったか

まずは、この3か月間(2026年3月中旬〜6月)の開発実績を数字でお見せします。

  • 507件のコミット(変更の単位)
  • 239件のプルリクエスト(レビューを経た変更のまとまり)
  • 約107,000行のコード追加、1,040ファイルの更新
  • リリース管理を導入して以降の約1か月だけでも86回のリリース(バージョン2.1.0 → 2.48.0)

機能追加(feat)が178件、不具合修正(fix)が173件、内部改善(refactor)が46件。「大きな一発」ではなく、小さな改善を毎日積み重ねるスタイルで前に進めてきました。

主に強化した業務領域

  • 会計連携の自動化:受注から会計ソフト(freee)への売上仕訳・入金消込の連携
  • 請求業務:請求書PDFの一括生成と、取引先への自動メール送信・送信状況の可視化
  • 配送・物流:佐川急便の月次請求CSVの取込と、自社データとの自動突合・送料マスタ更新提案
  • 受注・出荷管理:取引先ごとのEDI取込、出荷確定のチーム通知
  • ダッシュボード/チェックリスト:日次・月次の処理漏れ、未請求、出荷期限超過などをトップ画面で一覧化
  • 資金繰り支援:銀行口座残高の自動取得と、月末月初の資金移動アラート

「AIエージェントを使った内製開発」という選択

これらの開発は、AIコーディングエージェント(Claude Code)を全面的に活用して進めています。エンジニアが要件と設計判断を担い、実装の大部分をAIと協働で進める——いわば「設計と判断は人、手を動かす量はAIが拡張する」という形です。

効果が最も大きいのはリードタイムです。従来、業務システムの機能追加を外部に発注すると、見積り・仕様調整・開発・テストで数週間から数か月かかるのが一般的でした。現在は、現場の「こうしたい」を聞いてから企画・実装・リリースまで当日〜数日で回せるケースが増えています。先述の「1か月で86回のリリース」は、その速度の表れです。

ただし、速さだけを追っているわけではありません。後述するとおり、設計判断の記録・自動テスト・レビューといった「品質を担保する仕組み」とセットで運用しています。

具体例:「資金移動アラート」を数日で実装

直近の一例です。月末月初の長期借入返済に向け、複数口座の残高を見てメイン口座へ手作業で資金を移す作業は、専用ソフトもなく担当者の記憶に頼っていました。そこで、口座残高を毎朝自動取得し、設定した目安残高を下回れば不足額・営業日ベースの締切・移動目安日を算出して、トップ画面とTeams・メールで先回り通知する仕組みを追加。土日祝を避けた営業日計算や現場で目安額を変えられる設定画面まで含めて、企画から実装・テスト・リリースまで数日でした。

定量的な成果:人的工数はどれだけ圧縮されたか(試算)

システム化による工数削減を、業務領域ごとに試算しました。比較の基準となる「導入前」は、現在のKYUZOと同等の機能を、従来の弥生販売・弥生会計+手作業(全関連帳票の印刷・作成、Excelへの転記、EDIデータの手入力など)で達成しようとした場合の運用工数です。※受注・会計は実績ベース(1日あたりの作業時間を月21営業日で換算)、その他の領域は現場ヒアリングに基づく概算(月あたりの目安値)です。

業務領域 弥生販売+手作業で
同等機能を運用した場合(月)
KYUZO(月) 削減
受注・出荷管理/帳票印刷・Excel転記・EDI入力
(旧:弥生販売)
※1日 5〜6時間 → 約2時間(実績)/月21営業日換算
約115時間 約42時間 −約73時間
会計仕訳・入金消込(freee連携)
(旧:弥生会計)
※1日 約2時間 → 約0.5時間(実績)/月21営業日換算
約42時間 約12時間 −約30時間
請求書発行・送付 約20時間 約2時間 −18時間
配送(佐川)CSV取込・請求突合 約15時間 約2時間 −13時間
日次・月次の確認/締め作業 約12時間 約3時間 −9時間
資金繰り・残高確認 約4時間 約0.5時間 −3.5時間
合計 約208時間 約62時間 −約146時間

合計すると、月あたり約146時間、率にして約7割の工数削減という試算になります。年間に換算すると約1,750時間。これは、フルタイム従業員のおよそ0.9人分の労働時間に相当します。とくに受注業務は、弥生販売の時代に全関連帳票の印刷・作成やExcelへの転記まで含めて1日あたり5〜6時間を要していたものが、KYUZOでは1日あたり約2時間に。会計処理も、弥生会計の時代に日平均約2時間かかっていたものが大きく圧縮されました。受注に限らず連動する各業務をならすと、現在の関連作業は1日あたり1〜2時間程度に収まっています(受注・会計は実績値)。

人を減らすためではなく、余白をつくるために

この一連の業務は、かつてパート従業員3名体制で——しかも現在より狭い業務範囲で——回していました。現在は1名が、当時より広い範囲をカバーできるようになっています。

ここで強調しておきたいのは、これは「人員削減ありき」の取り組みではない、ということです。定型入力や転記・帳票作成から解放されたことで生まれた時間は、繁忙の波を吸収するバッファとして、また改善やお客様対応といった付加価値の高い仕事へと振り向けられるようになりました。少人数でも無理なく・属人化させずに事業を回せる体制をつくること——それが私たちの狙いです。

目指しているのは「ギリギリで回す」状態ではなく、人にしかできない仕事に集中できる余白を確保することです。

金銭換算でみた効果(試算)

削減工数を人件費で換算してみます。間接費を含む人件費を時間あたり3,000円と仮定すると、

  • 月間:約146時間 × 3,000円 = 約44万円/月
  • 年間:約530万円/年

さらに「開発コスト」の面でも効果があります。今回の3か月で積み上げた100件超の機能改善を、仮に外部に個別発注した場合、相応の費用規模になっていたはずです。AIエージェントを活用した内製開発により、外注に比べて開発の単価とリードタイムの双方を大きく圧縮できています。「投資回収(ペイバック)」ではなく「日々の運用の中で効果が積み上がる」状態をつくれているのが、内製化の最大の利点だと感じています。

私たちが大切にしている進め方

速度と品質を両立させるために、いくつかの「型」を決めて運用しています。北海道の同業・異業種の皆さんにも応用いただける部分があるはずです。

  • 小さくつくって、すぐ出す:大きな完成を待たず、使える単位で毎日リリースし、現場の反応を見て直す。
  • 現場の言葉でシステムを記述する:「張り込み」「精米」「締め」など、現場の業務語をそのままコードと画面に反映し、認識のズレを減らす。
  • 設計判断を記録に残す:なぜその方式にしたのかを意思決定記録(ADR)として残し、後から経緯を追える状態にする。
  • 自動テストと死活監視:変更のたびに自動テストで品質を確認し、定期処理は監視で「止まったら気づく」仕組みにする。
  • 権限と通知の設計:見せるべき人にダッシュボードで自動的に届け、締切前にアラートで先回りする。

これらは特別な道具ではなく、「判断は人が持ち、繰り返し作業は仕組みとAIに任せる」という考え方の現れです。

おわりに——北海道の事業者の皆さまへ

人口減少と人手不足が進むなかで、限られた人員でいかに業務を回すかは、北海道のあらゆる事業者に共通する課題です。私たちは、自社の現場で得られた業務改善の知見と手法を、これからも積極的に発信・共有していきます。

「この業務、本当に人がやる必要があるのか?」——その問い直しから、改善は始まります。同じ北海道で挑戦する皆さまの一助になれば幸いです。ご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

※本記事の工数・金額は、現場ヒアリングに基づくモデル試算です。実際の効果は業務量や運用体制により変動します。

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